63rd meeting
「復讐」
Core Talk Cafe meeting

テーマ選択の背景

報復、倍返し、英雄譚...善いものとしてであったり悪いものとしてであったり、色々な形で現れる「復讐」はどのようなものなのかをみなさんとお話ししたいと思いこのテーマが選ばれました。

当日の様子

はじめに参加者の皆さんが「復讐」について思ったり考えたりしていることを挙げていただいた際、「報復」「反撃」「仕返し」「仇討ち」「(カタカナ語の)リベンジ」など、様々な類義語が飛びだしました。それぞれ微妙に異なるニュアンスをもつこれらの語と共に、忠臣蔵やヤクザ映画、半沢直樹などの物語、あるいはリベンジポルノや最近起きた小金井市のアイドル(女子大生歌手)傷害事件などの事件も挙げられ、「復讐」というテーマと隣接する事柄の膨大さが浮かび上がります。問いの形でも、「復讐は損得でいえば損なのではないか、なぜするのか?」「よいことではないのに物語で描かれるとスカッとするのはなぜか?」「復讐を果たしたとしても憎しみは消えないのになぜするのか?」「親同士の事件の仇を子同士が討つことはなぜ可能か?」などが次々に挙がりました。
「怒りやかなしみ、正義感などの感情・心情」が復讐に大きく関係するという考え方は「相手を傷つけたい感情が復讐心では」や「復讐には相手の苦痛にゆがむ顔を見ることが必要なのでは」、「自分の感情の解決を他に求めること」など、多くの意見に共有されているようです。「復讐とは、復讐心をもつことと復讐行為のどちらのことか」という問いも出て、これは「両方セットで復讐なのでは」という方向に話し合いは進みました。ただし、感情と復讐の関係は、問いの中にもあったように必ずしも復讐を果たせば憎しみが消えるというような単純なものではないようです。
さらには、「復讐は周りの期待に応える形でなされることも多く、憎しみと必ずしも関係ないのでは」という意見も出始めます。武士や王族の復讐などは、仇は討たなければならないという慣習のためという部分も多そうです。「復讐は防御より攻撃寄りのものなのでは」「復讐の可能性が共有されていることで、たとえば核が抑止力として機能する」という意見も出たように、「復讐」がある種の切り札のように機能する場面もあるようです。
感情重視の説とは別に「復讐は損得の損を取り返すこと」という考え方も、「復讐は損なわれた自分の権力を圧倒的な形で回復し敵を凌駕すること」や「相手によって自分が損なわれた状態から、相手も損なった状態にしようとすること(Lose-Lose)が復讐なのでは」など、同じくらい共有されていました。この場合の「相手を圧倒し、損なう」ことについて、「公的な裁判などの調停は復讐っぽさが薄いのでは」という意見が出たように、復讐の感情重視説と損得重視説は重なる部分もありつつ微妙にベクトルが違うようです。「私刑と公刑/私憤と公憤」もキーワードとして浮上します。また、「対個人と対組織・集団で違いはあるか」といった構造的な部分にもふれてゆきます。「動物は即時的な“反撃”しかしない、人間の復讐も実は“遅延した反撃”で、それゆえ的外れになりうるのでは」という意見も出ました。
最後には「復讐とゆるしの関係は?」という新たな問いも出たのですが、十分に深める前にお時間となってしまいました。
Core Talk Cafe digest

Digest of digest

・なぜ復讐をするのか?
・復讐は善いことか、悪いことか
・動物は復讐するか?

Book Guide

『復讐と法律』 穂積陳重 『復讐と法律』 (岩波文庫)
穂積陳重
岩波文庫

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