55th meeting
「故郷」
Core Talk Cafe meeting

テーマ選択の背景

「故郷」という字をみて、どんなことが思い浮かんだでしょうか?明確に具体的なものが浮かぶ人も、自分にはそういうものがないと感じる人も、様々だと思います。
「故郷」とは何でしょう?単なる「出身地」という意味をこえて、深く考えてみませんか?
   

当日の様子

あいにくの小雨でしたが、故郷を想うにはちょうどよい雰囲気の中でゆっくりと始まりました。
最初は「あなたにとって故郷とは?」という問いを通して、まだ荒削りな故郷のイメージが交わされます。そこで次第に見えてきたのは、
?「故郷は空間的に、そして時間的に離れないと感じられない」
というものでした。
また、故郷は
?「ゆるぎない原点、原風景のようなもので、心のより所になる」
というポジティブな印象も見られました。逆に、故郷を隠したい、憎いとか、故郷の負の歴史もあるということにも注意が払われ、議論は進行していきます。
?に関しては、東京で生まれ育った方などからすると、このパターンの故郷は実感できないそうです。場所は変わらず、時間も徐々に変わっているので断絶のようなものが意識されないからでしょう。しかし、「やさしいおばあちゃんがいて、一面の田んぼに稲穂が実っている」というイメージ上の故郷はわかるということで、これは出身地によらず参加者のほとんどが共有できたようです。その意味では
?「日本人の原風景」
と言えそうで、?にも重なってきました。具体的なイメージとしては「となりのトトロ」の世界です。
ただ、「それって作られたものじゃないの?」という感覚は皆さんなんとなくお持ちのようで、議論は新たな展開を見せます。
故郷って…「共同体や民族をたばねるためのつくり話」、「自分が住んでいないからできる無責任な美化」、「変化をゆるせない保守的な気持ちの表れ」などなど。個人的には、故郷の田園風景に某巨大モールができるとがっかりするけど、地元の人たちは喜ぶだろうという例が面白かったです。
休憩をはさみ、?の故郷だけでなく、個人の心の中にあるパーソナルな故郷も単なる美化されたイメージなのか?という議論が深まっていきます。そして、私たちにとって、特に自分の大切な人のパーソナルな故郷は何か?という新たな視点から、いくら分かり合っていてもそこには触れられないのではないか?という話にもなりました。
最後は、故郷はあえて触れたり、分析したりしないことで故郷でありつづけるという意見に対し、故郷の悪い点やがっかりな点も含めてよく知ることを通して本当の故郷が現れるという意見が出て、これは両方共本質的だなーと思って考えていたあたりでお時間となりました。
   
Core Talk Cafe digest

Digest of digest

「故郷とは場所か?」
「共通の原風景とは?」
「故郷はつくられたものか?」

Book Guide

『トポフィリア―人間と環境』 イーフー・トゥアン『トポフィリア―人間と環境』(ちくま学芸文庫)
イーフー・トゥアン
ちくま学芸文庫

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