54th meeting
「やさしさ」
Core Talk Cafe meeting

テーマ選択の背景

好きな恋愛対象のタイプランキングで必ず上位に食い込んでいる「やさしいひと」。恋愛だけでなく、友人や家族、上司や先生を好意的に表現するときにも頻出しますね。しかし時には「甘い」というネガティブな印象を与えることも。偽善的なイメージを連想する人もいるかもしれません。こうして見ると、なかなかつかみ所のないことばに思えてきませんか?
   

当日の様子

まずは「やさしさ」のイメージをみなさまで具体例を交えながら挙げていくことから始まりました。そこで早速出たのが「受け手が望んでいることを先回りしてキャッチすること」。受け手がやってほしかったことが満ちると「やさしさ」完了です。ですが、受け手の欲求の措定がなかなか難しい。「おせっかい」や「ありがた迷惑」などやさしさとは区別できそうなタームが次々と挙げられました。また、やさしさの積極性・能動性だけでなく、相手のふるまいを許容する受動的な「寛容さ」がやさしさではないかという意見も。ここから、人がやさしいのか、それとも行為がやさしいのか、対話は発展していきます。また他方で、受け手の実感の絶対性も強調されました。というのも、やさしくした人なり行為がどんな意図の下にあろうとも、受け取った人が「やさしい!」と感じてしまえば、それは否応なく「やさしさ」だからです。ですが「相手による」ならば、やさしさを感じるのは「人それぞれ」ということになってしまいます。それでも何とか基準になりそうな部分を模索していると、「やさしさを発揮する側の心が行為に入り込んでいるかどうか」「受け手のことを思いやる、気を使うという心の働きがあるかどうか」という基準が発見されました。その他にも、思いやりが基準になるならばストーカーはやさしいのか、人の判断に関わらないやさしさ、つまり「お天道様だけが見ているやさしさ」は存在するのかなどなど、様々な方向への発展可能性を残して、お時間となりました。
   
Core Talk Cafe digest

Digest of digest

「やさしさは必ずしも良いことか?」
「やさしさは誰が判断するか?」
「やさしさの条件は何か?」

Book Guide

『「聴く」ことの力: 臨床哲学試論』 鷲田清一『「聴く」ことの力: 臨床哲学試論』(ちくま学芸文庫)
鷲田清一
ちくま学芸文庫

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